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【研究成果】エントロピー制御による量子シミュレータの極低温冷却法を確立!(山本研究室)

本学科の山本大輔准教授と東京理科大学創域理工学部先端物理学科の森田克洋助教の研究グループは、レーザー光で作られた2次元格子に閉じ込めた原子の気体を、量子力学の効果が顕著な極低温に冷やすための方法を大規模な数値計算によって確立しました。高温超伝導体や量子磁性体のような強相関電子材料は、近未来の科学技術への応用において重要視されていますが、それらの物質で特異な性質が現れる仕組みは完全には分かっていません。そこで、物質の振る舞いをレーザー光と原子気体による人工的なシステムを用いてシミュレートし、その仕組みを解明しようとする研究(量子シミュレーション)が試みられています。しかし、量子力学の効果が顕著になる極低温まで冷やすことが難しいという問題点がありました。

本研究では、さまざまな原子のうちでもスピン自由度(“色の種類”のようなもの)が多いものを用い、そのうちの“2色”だけをシステムの中心に集めることで、非常に温度の低い量子シミュレータが作成可能であることを理論的に示しました。これは、システム全体のエントロピーのうちの大部分が“色の種類”の多い外周部分の原子気体に逃がされ、中心部分の“2色”だけの原子気体のエントロピーが極端に下がることで、温度が低下するというメカニズムによるものです。このシステムを用いることで、高温超伝導体などの仕組みの完全解明につながることが期待されます。本成果は、2024年5月20日(現地時間)にアメリカ物理学会の発行する学術雑誌「Physical Review Letters」にLetter(速報)として掲載されました。

論文タイトル:Engineering of a Low-Entropy Quantum Simulator for Strongly Correlated Electrons Using Cold Atoms with SU(N)-Symmetric Interactions
DOI:10.1103/PhysRevLett.132.213401

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