お知らせ 研究関連
【受賞】玉岡幸太郎准教授が2026年度 (第21回) 素粒子メダル奨励賞を受賞しました。
玉岡幸太郎准教授が2026年度 (第21回) 素粒子メダル奨励賞を受賞しました。本賞は素粒子論を志す若手研究者の優れた研究を評価し、奨励することを目的に、海外オブザーバーを含む素粒子論グループ会員である著者全員を対象に、査読付き雑誌に掲載もしくは掲載決定された論文のうち、特に優れた論文を表彰するものです。
- 受賞論文:“Holographic Absolutely Maximally Entangled States in Black Hole Interiors”
Physical Review Letters 135, 261601 (2025) - 著者:姉川 尊徳(Takanori Anegawa)、玉岡 幸太郎(Kotaro Tamaoka)
本論文は、ブラックホール内部の量子状態という量子重力理論の重要問題の研究において、エンタングルメントの観点から新しい指針を与える極めて優れた成果であり、素粒子メダル奨励賞にふさわしいと判断された。
研究概要:
本論文で考察しているブラックホール内部のホログラフィー的理解の試みは、ブラックホール情報損失問題や特異点の解釈など、量子重力理論の根源的問題の解決へ向けた重要課題である。標準的な AdS/CFT 対応では、双対な CFT の住む境界面をバルクの共形無限遠に置くため、事象の地平面により境界面と因果的に隔離されたブラックホール内部をホログラフィーの観点から記述できるのか、できるとしてもどのようにするのかは極めて非自明であった。この課題に対して本論文は、AdS ブラックホールの内部にある特別な極値スライスをホログラフィックスクリーンとして考え、その上に双対な場の理論が存在すると仮定すると、対応する量子状態がフラットスペクトラムを持つ Absolutely Maximally Entangled (AME) 状態であることを見出した。AME 状態はテンソルネットワークを用いた AdS/CFT のトイ模型で良く使用される重要な概念であるが、実際の AdS/CFT における CFT 状態は AME 状態ではなく、厳密な AME 状態がどのように実現されるかは重要な疑問であった。

本論文は、低次元および高次元の AdS ブラックホールの具体例において、エンタングルメントエントロピーおよびレニーエントロピーの解析により、ブラックホール内部の特別な極値スライスの幾何学と AME 状態が対応することを示した。さらに、ブラックホール内部の状態が Haar ランダム状態で近似できること、また内部ヒルベルト空間の次元が外部 CFT ヒルベルト空間の次元より大きいという予想にも妥当性を与えている。