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【研究成果】山本研究室の今川大宙さん(修士課程2年)が論文を発表しました
山本研究室の今川大宙さん(相関理化学専攻 修士課程2年)が筆頭著者として行った、AdS/CFT対応から着想した量子スピン系の新しい時空局所応答現象に関する研究成果が、10月5日に論文投稿サイト arXiv にて発表されました。
本研究では、量子物質の中で起こる時間発展の現象を、シンプルな理論モデルを用いて調べています。特に、外部から小さな刺激を与えたときに、その影響が時間と空間の両方で鋭く局所化し、周期的に再現するという特徴的な応答に注目しました。
このような現象は、量子多体系が相転移の境界にあるときに現れやすく、近年ではホログラフィ原理(AdS/CFT対応)との関連が指摘されています。ホログラフィでは、量子系の時間発展が、別の理論における「時空の中を進む粒子の運動」と対応づけられることがあり、本研究で扱う局所化した応答も、そのような対応関係の具体例として理解されています。
本研究では、この現象がどのような刺激によって引き起こされるのかを詳しく調べました。その結果、空間的・時間的に鋭く局所化し、周期的に再現する応答は、連続極限において局所密度場に対応する特定の刺激を与えた場合にのみ現れることが明らかになりました。一方で、他のスピン成分に対応する刺激では、応答は局所化せず、通常の波のように空間全体へ広がる振る舞いが支配的となることが分かりました。
これらの結果は、この現象が刺激の選び方に強く依存した、明確な物理的仕組みに基づいていることを示しています。本研究は、量子多体系のダイナミクスの理解を深めるとともに、ホログラフィで議論されてきた時空の物理を、実験室の量子システムで検証するための具体的な指針を与えるものです。
論文タイトル:Operator dependence and robustness of spacetime-localized response in a quantum critical spin chain
著者:Daichi Imagawa, Keiju Murata, Daisuke Yamamoto
DOI:https://doi.org/10.48550/arXiv.2510.04047