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お知らせ

研究セミナー

第6回CHS物理学科研究セミナー開催(3/7)のお知らせ

講演者:下川 統久朗
沖縄科学技術大学院大学(OIST)
第6回CHS物理学科研究セミナー
日時:2023年3月7日(火)
     16:00~17:00
場所:日本大学文理学部 8号館 レクチャーホール
言語:日本語

タイトル:Characterization of quantum frustrated random singlet state via entanglement witnesses

概要:通常磁性体は温度を下げるとスピンの向きを揃えたがる傾向を持つものの、強い“量子揺らぎ“や”相互作用の競合(フラストレーション)“といった要素を備えた磁性体では絶対零度においても磁気秩序を示さない量子スピン液体(QSL)状態が実現することが期待されている。QSL状態の研究は、初期の理論提案[1]から今に至るまで実に半世紀以上もの間活発に続けられてきており、その結果、現在においてはQSL的な振る舞いを示す様々な候補物質が数多く報告されている。一方で近年になって、幾つかのQSL候補物質では上記の2つの要素に加えて強い“ランダムネス“の効果が加わることによって生まれる新しいタイプの液体状態ー量子フラストレートランダムシングレット(QFRS)状態ーが実現しているのではないかという理論提案[2,3]もなされている。実際、QFRS状態は低温比熱の線形性や動的構造因子における連続体などといった、これまでQSL状態を実験的に同定するために使われてきたQSL的特徴を有することが数値的に示されている。それ故にQSL状態とQFRS状態を実験的に区別することは非常に難しい問題であった。そこで我々は量子情報分野において良く知られたentanglement witnesses (エンタングルメントの目撃者)と呼ばれる種々のエンタングルメント測度を活用することでこの問題を解決することを試みた。本講演はQSL状態とQFRS状態に関する簡単なレビューから始め、ボンドランダムネスを考慮した三角格子量子磁性体に対するentanglement witnessesなどの数値計算結果を紹介しつつ、これらの結果をベースとしたQSL状態とQFRS状態の実験的な判定法を提案する予定である。

参考・引用:
[1] P. W. Anderson, Mat. Res. Bull. 8, 153 (1973).
[2] K. Watanabe et al, J. Phys. Soc. Jpn. 83, 034714 (2014).
[3] H. Kawamura et al, J. Phys. Cond. Matt. 31, 504003 (2019).