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研究内容

1.鉄系超伝導体の圧力効果

2008年2月に東京工業大学細野秀雄教授のグループによって報告された鉄ニクタイド超伝導体LaFeAsO1-xFxはTc=26Kの高温超伝導体であり、しかも通常、超伝導と相容れない磁気的性質をもつ鉄をベースとした物質であるため、世界中の超伝導研究者に大きな衝撃を与えました1)。この物質の結晶構造は1986年に発見された銅酸化物による高温超伝導体とは異なるものの、図1に示すように層状構造をとる点では共通しており、我々のグループでは、圧力による電子状態の変化が大きいと考えていました。細野グループとは2006年度より共同研究を行ってきており、この新しい超伝導体の発見後直ちに高圧実験を行ったところ、図2に示すようにTcが銅酸化物超伝導体を除く最高の46K(超伝導に伴う電気抵抗のわずかな減少が50Kで見えている)まで上昇することが明らかになりました2),*。その後の展開は非常に速く世界中で新物質が発見され、今のところSmFeAsO1-xFxのTc =55K(1気圧)が鉄ニクタイド超伝導体の最高温度です。このような状況の中、より高いTcを持つ超伝導体の発見や超伝導メカニズム解明につながるデータを集めるための実験を進めています。この物質系の特徴の一つとしてTcの圧力効果が大きいことが挙げられますが、キャリアがドープされていない非超伝導物質LaFeAsO3)やSrFe2As24)で圧力誘起超伝導が見つかっています。

*この研究論文は2008年4月24日に英国科学誌Natureに発表され、トムソン・ロイター社のThe Red-Hot Research Papers of 2008 (2008年に理系全般の世界で最も注目を集めた論文)の11位に選ばれました。

  • 図1 LaFeAsO1-xFxの結晶構造。LaO層のOがFで置換されることで、伝導面であるFeAs層に電子がドープされ超伝導体となる。

  • 図2 LaFeAsO1-xFxの(x=0.11)のTcの圧力効果。Run1はピストンシリンダー装置、Run2はダイヤモンドアンビルセルを用いて圧力を発生し、電気抵抗を測定することによりTcを決定している。

  1. 1) Y.Kamihara et al., Journal of American Chemical Society, 130, 3296-3297 (2008)
  2. 2) H.Takahashi et al., Nature, 453, 376-378 (2008)
  3. 3) H.Okada et al., Journal of Physical Society of Japan, 77, 113712 (2008)
  4. 4) K.Igawa et al., Journal of Physical Society of Japan, 78, 025001 (2009)